【夏だから】懐かしのドラマ「すいか」が奇跡だと思う5つの理由【語ります】

奇跡のようなドラマでした

2003年の放送から15年経ったいまでも、印象に残り続けている作品。

脚本家、木皿泉による初の連続ドラマです。

舞台は三軒茶屋にあるレトロ感漂う集合住宅「ハピネス三茶」。

そこに入居している4人を中心に話は進みます。

このドラマを一言でいうと

奇跡。

その「奇跡」をすこし語ります。お付き合いくださいませ。

このドラマが奇跡な5つの理由

理由1.脚本

ドラマの屋台骨かつ心臓部。

結構な量で言いたいことをセリフで言わせているのだけれど、押しつけがましさを感じません。

「脚本家が言いたいこと」が透けてみえず、それぞれの役の言葉として観れました。

理由2.キャスティング

小林聡美、ともさかりえ、市川実日子、浅丘ルリ子、小泉今日子、高橋克実、金子貴俊、もたいまさこ、白石加代子、片桐はいり。

全員、ぴったりな配役でこの方たち以外のキャスティングは想像できません。

メインキャストもさることながら、一番印象に残ったのは梅子の入院先の病院の廊下でタバコ吸いながら梅子と会話する同じく入院患者の川村役の方。(役者の方のお名前はわかりませんでした)

数分間の短いシーンでしたが、芝居には見えなくて。本当にそんな人物がいるみたいでそんな芝居ができるなんてスゴイなって思った記憶があります。

理由3.美術

記憶がおぼろげですが、魅力的な建物だったと思います。

三軒茶屋にそれなりの土地の広さがあって、あのレトロ感。

もうそこはファンタジー? 実際のところ三茶にあんな開けた広い土地で自然もあふれる場所ってあるんですかね。

そんな空間に存在するハピネス三茶。ここになら入居してみたいって思う人も少なくないのでは。

台所・風呂・トイレ・洗面所が共有と敬遠してもおかしくない物件ですが、ああいったメンバーならば人生の数年間過ごしてみるのも悪くないかも。ミニマリストやシンプルライフのひととも相性が良さそうです。

理由4.プロデューサーほか

文庫本「すいか2」の文庫版あとがきによると、放送時の視聴率は悪かったようです。

今、読み返してみると、いろんなことを無視して書いているなぁと思う。当時はこれでいいと思い込んでいたので、河野プロデューサーと夜中まで言い合いしていた。何と言われても、かたくなに自分たちの意見を曲げなかった。「いやならおりる」と息巻き、その上書くのは遅い。とても扱いにくい作家だったと思う。

『すいか2』文庫版あとがきより

このドラマを好きな人間の意見として

「いろんなことを無視して書いて」くれてよかった
「夜中まで言い争いして」くれてよかった
「意見を曲げずにいて」くれてよかった

と、思います。

(視聴者からすると「一般的なドラマのセオリーはこう」とか言ったことはどうでもよくて、そんなものはいいから「おもしろいもの」「良作」を見せてほしい。または完成度が低くても冒険した作品とか)

そういった脚本家とともに切磋琢磨したプロデューサーの方たちの存在があればこそ人々の心に残る作品になったのでしょう。

理由5.時代

煮詰まっている基子を中心にストーリーはすすみますが、基子は34歳。

2003年の34歳と、2018年の34歳とでは変わってきていると思います。

2018年のいまならば、「なにを臆することがある。ガンガンいきなされ、まだ34でしょ」と。

そういった問題じゃないことは承知ですが、年齢に関する感覚って時代によって違うと思ったので書きました。

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こんなドラマです

登場人物は

【ハピネス三茶の住人達】

ゆか・・・建物を維持管理している大家兼学生。朝晩二食付きの宿とあって料理にいそしむ日々。

絆・・・エロ漫画家、27歳。

夏子・・・大学教授。定年まで数年か。

基子・・・勤続14年の信金のOL、34歳。

【そのほかの人】

梅子・・・基子の母。

馬場チャン・・・基子の同期。勤めていた信金から3億円横領。逃亡中。

間々田・・・夏子の教え子。妻には内緒でハピネス三茶に入り浸る。

響一・・・間々田の娘の元カレ。

生沢・・・馬場を追う刑事。

ママ・・・バー「泥舟」のママ。

綱吉・・・絆の猫

温度と湿度が心地よい

じっとりジメジメし過ぎず、かといってカラッと乾燥し過ぎることもない。

それぞれなにかを抱えながらも、ちょっとずつ成長していく。

寄りかからせるやさしさと、寄りかかるやさしさ。

双方の立場の人間がいるからこそ、人は生きていけるのかも。

そういったことを感じさせてくれるドラマです。

どの職業も良さがある

この作品にはいろんな職種が出てきますが、どれもが「あ、一度やってみたいかも」と思わせられます。それだけ各登場人物が魅力的に描かれているのでしょう。

 

三茶の大家さんかぁ。裏方的な立ち位置だけど、誰かを支えるのもよさそう。

漫画家とかバーのママって一度は憧れるよね。

大学教授なんて知的で自立してカッコいい。

信金OLみたいな制服着用のかたい職も経験してみたい。

 

もちろん彼女たちにとっては「ちょっとやってみるか」といった気軽なものではなく、

・悩んだうえで
・流れで
・努力して
・これになりたい! と強い希望で
・融資を受けての開業

だったりと、想像とは違ったりモヤモヤしたりと楽しいことばかりではないはず。

それでも「なんかいいよね」といった気持ちになれるのは、このドラマがもつ空気なのかな。

お気に入りのセリフたち

とにかく印象的なセリフが多いこのドラマ。

各登場人物にひとゼリフ(ワンシーン)という勝手な制約を設けました。好きなセリフがありすぎて選ぶのが大変でしたがご紹介します。

 

夏子

基子「 ――― 私みたいな者も、居ていんでしょうか?」

夏子「(ジッとみて)居てよしッ!

『すいか』第一話より

大学教授の夏子。時にはきびしく時にはやさしい言葉をかけてくれ深みを感じさせるセリフがたくさんあります。

この「居てよしッ!」が断トツに頭一つ出ているのでこれを選びました。

第一話に出るこのセリフで一気に「すいか」に惹き込まれた人も多いのでは。

 

基子

基子「一日が終わってしまう ――― 私、何買うか、まだ決めてないのに」

響一「でも、何かあるんでしょう? こういうもの買いたいっていう、大体の希望」

基子「自分のカラを打ち破るような、衝撃的な物よ」

響一「なんですか、それ」

基子「わかりません。だいたい、何やりたいとか、何買いたいとか、考えて出てくるもんじゃないっつーの

『すいか』第三話より

中学のときから長年貯めていた100円玉貯金を使おうと決意する基子。100円玉の入ったポリ容器を持ち出し街にでるも使い道を思いつきません。

このドラマは要所要所で「考えるとこを放棄する怖さ」や「ちゃんと考えるべき」といったセリフがあります。

そんななか「考えたってわからん」という基子のセリフ。(「考えろ」と相対するセリフではありませんが)

やりたいこととか買いたいものって「湧き出てくる」ものなんでしょうね。ジッとして頭であーでもないこーでもないと考えていたところで浮かび上がりません。

最後はその100円玉貯金をあるものに変えるのですが、それだって一度外に出て行動に出たからこそ導き出せた結果です。

まずは動かなきゃって思わせられるエピソードでした。あとは人のために使うお金っていいよね、とも。

 

ゆか

ゆか(声)「お母さんも、何か面白いことにハマっていたらいいのに。ひとつのことでなくていいから、明日も、次の日も、生きたくなるような

ゆか(声)「それだけで幸せになれるようなものに、ハマっていたら、いいのに」

『すいか』第四話より

ゆかが幼きころ、余所の男と一緒になるべく家を出て行ったしまった母へのゆかのつぶやき。

しあわせって「オリンピックでメダルを獲る」とか「東大に入る」とか大それたことではなくて、好きな作家の本を読むとか、好物のパンを食べ歩くとか、習い事のダンスにハマっているとか、部屋をキレイに維持することが楽しいとか、そんなことで良いんだと思います。

自分だけがしあわせならしあわせ、ではなくて周りの人間も楽しんでいてほしい、生き生きと人生を過ごしてほしい。それが平和につながるのでは、なんて。

 

絆「最後の夏休みが終わって、とうとう就職かぁ」

響一「何だか、寂しい話ですね」

絆「羨ましいわよ。私なんて、永遠に、夏休みのままのような気がする

『すいか』第八話より

就職浪人をしていた響一の職が決まり、それを絆に報告したときのセリフ。

人生、枠があるのも窮屈だけど枠がないっていうのもシンドかったりするんですよね。

 

生沢

基子「でも、私も逃げたい。親から、仕事から、こんな自分から、あらゆるものから、私も逃げたい」

生沢「そりゃ、誰だってそうです。でもね、ここに居ながら、逃げる方法が、きっとある。それを自分で考えなきゃダメです

基子「ないですよ。そんな方法」

生沢「早川さん。人に嫌われてもいいんです。矛盾してる自分を、許してあげなきゃダメです」

『すいか』第四話より

馬場の同期である基子の聞き込みにハピネス三茶に訪れた刑事生沢。

なりたいものがないとう基子に語ります。

職業が刑事とか医者とか、そういった人たちって強い信念と根性と自信をもって仕事してるんだろうなって思ってしまうのですが、刑事である生沢も迷いがないわけではなく、人間味のある人物です。

 

馬場チャン

馬場チャン「掃除機の音、ものすごく久しぶりだった。お茶碗やお皿が触れ合う音とか、庭に水をまいたり、台所でなにかこしらえたり、それ皆で食べたり―――、みんな私にないものだよ」

基子「―――」

馬場チャン「私、そんな大事なもの、たった三億円で手放しちゃったんだよね

『すいか』第十話より

勤め先の信金から三億円横領して逃亡の身の馬場チャンが最終話で基子と交わした会話。

 

この「三億円」という数字。日本人にとってひとつの指標になってるかと。

例えばジャンボ宝くじは1等前後賞合わせて3億円。

サラリーマンの生涯賃金3億円。(今はもっと低いと思うので一昔前の印象ですが)

3億円事件というのもありました。

 

3億円さえあれば安心できる。そんな思いがどこかにあるのではないでしょうか。

けれど馬場チャンは手に入れた3億円を「たった3億円で」と言います。正攻法で得たお金ではないので、金額の多寡に限らず気持ちの良い使いかたはできないでしょう。

お天道様のしたを歩ける人生はお金では計り知れないもの。

 

3億円という数字に限らず、お金にとらわれ何かを見失っていること、ありませんか?

お金は大事ですが、そこだけに視野を奪われてしまうのはきっとモッタイナイことで、馬場チャンを通して日本人に問いかけられているような気持ちになりました。

 

もっと良いセリフもあります

このドラマをみる年齢、タイミングによって胸にくるセリフが違うと思います。

今回ピックアップしたもの以外にも、さらりと交わされる会話に

「うっ」と痛いところを突かれたり
「だよね」と同感したり
「ちょっと救われた気がする」とホッしたり

いろんなセリフが散りばめられていますよ。

「部長って―――人間だったのよぉ」も好きなエピソードです。

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文庫本には書下ろしも収録されています

「すいか」は文庫本にもなっています。

以前書籍化されたシナリオブックは新品では手に入らず、古本で見つけたものの値段が高くて手を出せなかったので、文庫本の出版はありがたかったです。

 

1話から5話までが「すいか1」に。

6話から10話までが「すいか2」に。
オマケとして10年後のハピネス三茶も書下ろしで収録されてますので、一読の価値ありです!

夏の終わりに

中心は甘いけれど皮に近づくと味気なく、タネが邪魔だけど黒いタネがないスイカなんてスイカじゃない。

すべてをひっくるめてスイカで、そんな果物のスイカを体現しているようなドラマ「すいか」。

夏バテして食欲がわかない方、変わらない日常にモヤモヤと煮詰まっている方。

このドラマをみてひとつでも刺さるものがあったら、この夏のひとかけらの思い出になるでしょう。

そして食欲もわいてくるはず。なにせ食べ物のシーンが多いですからね。

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